【コラム】パンのクラム
2014.12.17
「パンニュース」2014年12月15日号掲載
師走の第47回衆院選。1強5弱の構図は変わらなかった。
あとは景気回復して賃金が上がり、消費が上向いてパンが売れるようになればいうことなしだが、それほど容易ではない。
なにしろ物価上昇に賃金が追いつかない。実質賃金指数は、16カ月連続のマイナスだ。
ある政治家が「これだけ円安ドル高になったのに、業績が上がらないのはよほど運が悪いか、経営者の能力がないかだ」という意味のことを言ったが、一部の上場企業には当てはまっても、円安で苦しむ製パン業を含む食品企業や、中小企業には当てはまらない。
原油価格の下落はあっても、製パンに使用する輸入原材料、輸入食品の価格上昇は止まらず、リテイルベーカリーの一部はパンの値上げに踏み切っている。
労働組合の連合は、来春の春闘で、ベア2%以上の方針を決めたが、景気の先行きは不透明で、厳しい局面を迎えそうだ。
「パンの値段を上げたくても、お客様の家計を考えると上げられない」というベーカリーは多い。
ただ、値段は高くてもどこにもないパン(ブランド)を持つ店は好調だし、ある大手ホールセラーは「ついこの間まで商品開発といえば、『ひたすら安くて大きいパン』だったが、ここへ来て多少高くても価値のある美味しいパンを作れば、売れることがわかってきた。手間ひまをかけることで、付加価値を付ける商品を出す流れも出てきた」という。
多くの人は、失われた20年に戻ることは望まない。パン業界もまた、高品質化、高付加価値化によって脱出しなければならない。(Y)